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Envoy@サービスメッシュ系ミドルウェア

はじめに

本サイトにつきまして、以下をご認識のほど宜しくお願いいたします。


01. Envoyの仕組み

アーキテクチャ

envoy_structure

Envoyは、コントロールプレーンに相当するxDSサーバーと、データプレーンに相当するプロキシコンテナから構成される。

Envoyには静的/動的な設定がある。

静的な設定は、Envoyの起動時に適用される。

一方で動的な設定は、xDSサーバーによってEnvoyの実行時に初めて適用される。

Envoyは、xDSサーバーとの間で、リモートプロシージャーコールを双方向で起動時/定期的に実行し、取得した宛先情報を自身に登録する。


ホットリロード

Envoyは、通信を切断することなく、コントロールプレーンから取得した動的な設定を自動的に再読み込みできる。

ホットリロードでは、現在のプロセス (プライマリプロセス) を残したまま、新しいプロセス (セカンダリプロセス) を起動し、通信を段階的に移行する。

ちなみに、ApacheやNginxはリロード機能を持つが、自動でリロードするホットリロードの機能はない。

envoy_hot-reload


ダブルプロキシ

コントロールプレーンを持たないリバースプロキシの場合、通信の送信元と宛先にいるリバースプロキシは独立している。

一方で、マイクロサービスにおけるEnvoyでは、Envoyのコントロールプレーンが通信の送信元と宛先の両方のリバースプロキシを一緒に管理する。

このようなリバースプロキシの配置方法をダブルプロキシといい、サイドカー型として機能する。


01-02. コントロールプレーン

コントロールプレーンとは

コントロールプレーンは、データプレーンのEnvoyを管理する。サービスディスカバリーのためのAPI (XDS-API) を持つ。


XDS-API

▼ XDS-APIとは

コントロールプレーンのXDS-APIは、Envoyからリモートプロシージャーコールを受信し、通信の宛先情報を返信するAPIを持つサーバー。主要なサーバーの一覧を示す。

▼ ADS-API:Aggregated XDS

単一のエンドポイントを提供し、適切な順番で各XDS-APIから宛先情報を取得できる。

各XDS-APIから宛先情報を取得しても良いが、ADS-APIで一括して取得することできる。

もしADS-APIで一括して取得しない場合、各XDS-APIから取得できる宛先情報のバージョンがバラバラになってしまい、Envoyの処理コンポーネント間で宛先情報のバージョンの競合が起こることがある。

▼ CDS-API:Cluster Discovery Service

単一のエンドポイントを提供し、クラスターを取得できる。

Envoyの実行時に、ルーティング先のClusterの設定を動的に検出可能にする。

▼ EDS-API:Endpoint Discovery Service

単一のエンドポイントを提供し、エンドポイントを取得できる。

Envoyの実行時に、ルーティング先のClusterに含まれるメンバーを動的に検出可能にする。

▼ LDS-API:Listener Discovery Service

単一のエンドポイントを提供し、リスナーを取得できる。

Envoyの実行時に、リスナーの設定を動的に検出可能にする。

▼ RDS-API:Route Discovery Service

単一のエンドポイントを提供し、ルートを取得できる。

Envoyの実行時に、ルーティングの設定を動的に検出可能にする。

▼ SDS-API:Secret Discovery Service

単一のエンドポイントを提供し、証明書を取得できる。

Envoyの実行時に、リスナーの暗号化の設定を動的に検出可能にする。


XDS-APIのエンドポイント

▼ XDS-APIのエンドポイントとは

コントロールプレーンのXDS-APIにはエンドポイントがある。Envoyからリモートプロシージャーコールを受信し、通信の宛先情報を返信する。

▼ 実装

Envoyを使用するサービスディスカバリーツールのいくつか (例:Istio、Linkerd) では、コントロールプレーンにgo-control-planeパッケージが使用されている。

package resource

...

const (
    FetchEndpoints        = "/v3/discovery:endpoints"
    FetchClusters         = "/v3/discovery:clusters"
    FetchListeners        = "/v3/discovery:listeners"
    FetchRoutes           = "/v3/discovery:routes"
    FetchScopedRoutes     = "/v3/discovery:scoped-routes"
    FetchSecrets          = "/v3/discovery:secrets"
    FetchRuntimes         = "/v3/discovery:runtime"
    FetchExtensionConfigs = "/v3/discovery:extension_configs"
)

...
package server

...

func (h *HTTPGateway) ServeHTTP(req *http.Request) ([]byte, int, error) {
    p := path.Clean(r.URL.Path)

    typeURL := ""
    switch p {
    case resource.FetchEndpoints:
        typeURL = resource.EndpointType
    case resource.FetchClusters:
        typeURL = resource.ClusterType
    case resource.FetchListeners:
        typeURL = resource.ListenerType
    case resource.FetchRoutes:
        typeURL = resource.RouteType
    case resource.FetchScopedRoutes:
        typeURL = resource.ScopedRouteType
    case resource.FetchSecrets:
        typeURL = resource.SecretType
    case resource.FetchRuntimes:
        typeURL = resource.RuntimeType
    case resource.FetchExtensionConfigs:
        typeURL = resource.ExtensionConfigType
    default:
        return nil, http.StatusNotFound, fmt.Errorf("no endpoint")
    }

    ...

    out.TypeUrl = typeURL

    ...

    res, err := h.Server.Fetch(req.Context(), out)

    ...

}


01-03. データプレーン

データプレーンとは

▼ データプレーンの仕組み

envoy_data-plane_architecture

データプレーンでは、Envoyが稼働し、通信を宛先にルーティングする。

データプレーンの処理は、コンポーネント (リスナー、ルート、クラスター、エンドポイント) から構成される。

▼ インバウンド通信 / アウトバウンド通信 の場合

インバウンド通信 / アウトバウンド通信であっても、同じである。

インバウンド通信の場合はリスナーはIngressリスナーとして、アウトバウンド通信も場合はEgressリスナーとして、同じ構成の処理を辿る。

▼ アップストリーム/ダウンストリーム

アップストリームは、Envoyのレスポンスの送信元を表す。

ダウンストリームは、Envoyのレスポンスの宛先を表す。

▼ XDS-APIとの通信の仕組み

Envoyは、XDS-APIにリモートプロシージャーコールを一方向/双方向で実行し、返信/送信された宛先情報を動的に設定する。

Envoyが組み込まれたサービスメッシュツール (例:Istio、Linkerd) では、Envoyのコントロールプレーンへのリモートプロシージャーコール処理の緩衝材として、エージェント (例:pilot-agent) が提供されている。

(1)

Envoyは、起動時にリスナーとクラスターをXDS-APIから取得する。

取得した宛先情報を自身に設定する。

(2)

Envoyは、リスナーに紐付ける必要のあるルートを特定する。

(3)

Envoyは、クラスターに紐付ける必要のあるエンドポイントを特定する。

(4)

Envoyは、ルートとエンドポイントをXDS-APIから取得する。

取得した宛先情報を自身に設定する。

(5)

Envoyは、リスナーとクラスターをXDS-APIから定期的に取得する。

取得した宛先情報を自身に設定する。

▼ 実装

message DiscoveryRequest {
  option (udpa.annotations.versioning).previous_message_type = "envoy.api.v2.DiscoveryRequest";

  ...

}
message DiscoveryResponse {
  option (udpa.annotations.versioning).previous_message_type = "envoy.api.v2.DiscoveryResponse";

  ...

}

▼ リクエスト内容の種類

記入中...


リスナー

▼ リスナーとは

リスナーでは、Envoyに対する通信をIPアドレスとポートで待ち受ける。

▼ 仮想リスナー

▼ リスナーの静的な登録

envoy.yamlファイルにて、listenersキーを設定することにより、Envoyに静的にリスナーを静的に設定できる。

static_resources:
  # リスナーのリスト
  listeners:
    - name: listener_0
    - address:
        socket_address:
          address: 127.0.0.1
          port_value: 10000
      # 使用するフィルターを設定する
      filter_chains:
        - filters:
            - name: envoy.filters.network.http_connection_manager
              typed_config:
                # ネットワークフィルター (http_connection_manager) を指定する
                "@type": type.googleapis.com/envoy.extensions.filters.network.http_connection_manager.v3.HttpConnectionManager
                stat_prefix: ingress_http
                codec_type: AUTO
                http_filters:
                  - name: envoy.filters.http.router
                    typed_config:
                      # HTTPフィルターを指定する
                      "@type": type.googleapis.com/envoy.extensions.filters.http.router.v3.Router
                route_config:
                  - name: "50001"
                    virtual_hosts:
                      # 仮想ホスト名
                      - name: foo_service
                        # ホストベースルーティング
                        domains:
                          - "*"
                        # ルートのリスト
                        routes:
                          - match:
                              # パスベースルーティング
                              prefix: /
                            route:
                              # クラスター
                              cluster: foo-cluster
                      - name: allow_any
                        # ホストベースルーティング
                        domains:
                          - "*"
                        routes:
                          - match:
                              prefix: /
                            route:
                              cluster: PassthroughCluster
                  - name: "50002"
                    virtual_hosts:
                      # 仮想ホスト名
                      - name: bar_service
                        domains:
                          - "*"
                        routes:
                          - match:
                              prefix: /
                            route:
                              cluster: bar-cluster
                      - name: allow_any
                        domains:
                          - "*"
                        routes:
                          - match:
                              prefix: /
                            route:
                              cluster: PassthroughCluster
                  - name: "50003"
                    virtual_hosts:
                      # 仮想ホスト名
                      - name: baz_service
                        # ホストベースルーティング
                        domains:
                          - "*"
                        routes:
                          - match:
                              prefix: /
                            route:
                              cluster: baz-cluster
                      - name: allow_any
                        # ホストベースルーティング
                        domains:
                          - "*"
                        routes:
                          - match:
                              prefix: /
                            route:
                              cluster: PassthroughCluster

▼ リスナーの動的な登録

Envoyは、起動時にコントロールプレーンのLDS-APIにリモートプロシージャーコールを一方向/双方向で実行し、宛先のリスナーを取得する。

また、Envoyは宛先のリスナーを自身に動的に設定する。

...

// リモートプロシージャーコール
service ListenerDiscoveryService {
  option (envoy.annotations.resource).type = "envoy.config.listener.v3.Listener";

  // 双方向ストリーミングRPC
  rpc StreamListeners(stream discovery.v3.DiscoveryRequest)
      returns (stream discovery.v3.DiscoveryResponse) {
  }

  rpc DeltaListeners(stream discovery.v3.DeltaDiscoveryRequest)
      returns (stream discovery.v3.DeltaDiscoveryResponse) {
  }

  // 単項RPC
  rpc FetchListeners(discovery.v3.DiscoveryRequest) returns (discovery.v3.DiscoveryResponse) {
    option (google.api.http).post = "/v3/discovery:listeners";
    option (google.api.http).body = "*";
  }
}

...

*実装例*

Istioを使用して、envoyコンテナを稼働させるとする。

Kubernetesでは、YAMLファイルのキー名の設計規約がローワーキャメルケースであることに注意する。

# foo-pod内のenvoyコンテナが、以下のenvoy.yamlファイルで構成されているとする。
# 仮想アウトバウンドリスナー
- name: 172.16.0.1_50001
  accessLog:
    - filter:
        responseFlagFilter:
          flags:
            - NR
      name: envoy.access_loggers.file
      typedConfig:
        "@type": type.googleapis.com/envoy.extensions.access_loggers.file.v3.FileAccessLog
        path: /dev/stdout
  address:
    # 宛先IPアドレスとポート番号が合致した場合に、このリスナーで処理される。
    socketAddress:
      # ServiceのIPアドレス
      address: 172.16.0.1 # 全ての宛先IPアドレスを合致させる場合は、0.0.0.0 とする。
      # Serviceのポート番号
      portValue: 50001
  bindToPort: "false"
  filterChains:
    - filters:
        - name: istio.stats
          typedConfig:
            "@type": type.googleapis.com/udpa.type.v1.TypedStruct
            typeUrl: type.googleapis.com/envoy.extensions.filters.network.wasm.v3.Wasm
        - name: envoy.filters.network.tcp_proxy
          typedConfig:
            # ネットワークフィルター (tcp_proxy) を指定する
            "@type": type.googleapis.com/envoy.extensions.filters.network.tcp_proxy.v3.TcpProxy
            accessLog:
              - name: envoy.access_loggers.file
                typedConfig:
                  "@type": type.googleapis.com/envoy.extensions.access_loggers.file.v3.FileAccessLog
                  path: /dev/stdout
            # ネットワークフィルター (tcp_proxy) の場合、ルートがなく、直接クラスターを指定することになる
            cluster: outbound|50001|v1|foo-service.foo.svc.cluster.local
            statPrefix: outbound|50001|v1|foo-service.foo.svc.cluster.local
  # アウトバウンド通信のみをこのリスナーで処理する。
  trafficDirection: OUTBOUND
# 仮想アウトバウンドリスナー
- name: 172.16.0.2_50002
  accessLog:
    - filter:
        responseFlagFilter:
          flags:
            - NR
      name: envoy.access_loggers.file
      typedConfig:
        "@type": type.googleapis.com/envoy.extensions.access_loggers.file.v3.FileAccessLog
        path: /dev/stdout
  address:
    socketAddress:
      address: 172.16.0.2
      portValue: 50002
  bindToPort: "false"
  filterChains:
    - filters:
        - name: istio.stats
          typedConfig:
            "@type": type.googleapis.com/udpa.type.v1.TypedStruct
            typeUrl: type.googleapis.com/envoy.extensions.filters.network.wasm.v3.Wasm
        - name: envoy.filters.network.tcp_proxy
          typedConfig:
            # ネットワークフィルター (tcp_proxy) を指定する
            "@type": type.googleapis.com/envoy.extensions.filters.network.tcp_proxy.v3.TcpProxy
            accessLog:
              - name: envoy.access_loggers.file
                typedConfig:
                  "@type": type.googleapis.com/envoy.extensions.access_loggers.file.v3.FileAccessLog
                  path: /dev/stdout
            # ネットワークフィルター (tcp_proxy) の場合、ルートがなく、直接クラスターを指定することになる
            cluster: outbound|50002|v1|bar-service.bar.svc.cluster.local
            statPrefix: outbound|50002|v1|bar-service.bar.svc.cluster.local
  trafficDirection: OUTBOUND
# 仮想アウトバウンドリスナー
- name: 172.16.0.3_50003
  accessLog:
    - filter:
        responseFlagFilter:
          flags:
            - NR
      name: envoy.access_loggers.file
      typedConfig:
        "@type": type.googleapis.com/envoy.extensions.access_loggers.file.v3.FileAccessLog
        path: /dev/stdout
  address:
    socketAddress:
      address: 172.16.0.3
      portValue: 50003
  bindToPort: "false"
  filterChains:
    - filters:
        - name: istio.stats
          typedConfig:
            "@type": type.googleapis.com/udpa.type.v1.TypedStruct
            typeUrl: type.googleapis.com/envoy.extensions.filters.network.wasm.v3.Wasm
        - name: envoy.filters.network.tcp_proxy
          typedConfig:
            # ネットワークフィルター (tcp_proxy) を指定する
            "@type": type.googleapis.com/envoy.extensions.filters.network.tcp_proxy.v3.TcpProxy
            accessLog:
              - name: envoy.access_loggers.file
                typedConfig:
                  "@type": type.googleapis.com/envoy.extensions.access_loggers.file.v3.FileAccessLog
                  path: /dev/stdout
            # ネットワークフィルター (tcp_proxy) の場合、ルートがなく、直接クラスターを指定することになる
            cluster: outbound|50003|v1|baz-service.baz.svc.cluster.local
            statPrefix: outbound|50003|v1|baz-service.baz.svc.cluster.local
  trafficDirection: OUTBOUND


フィルター

▼ フィルターの機能別種類

各フィルターは、ReadFilterとWriteFilterに分類できる。

執筆時点 (2024/01/21) では、HTTPの処理に関するフィルターは全てReadFilterである。

▼ リスナーフィルター

各種プロトコルの受信処理を実施する。

▼ ネットワークフィルター

TCPプロトコルの処理や後続のHTTPフィルターの管理を実施する。

主要なネットワークフィルターとして、network.http_connection_managernetwork.tcp_proxyがある。

▼ HTTPフィルター

HTTPプロトコルの処理を実施する。

主要なHTTPフィルターとして、http.routerhttp.grpc_webがある。

▼ UDPリスナーフィルター

▼ RBACフィルター

認証認可を実施する。

主なフィルターとして、http.rbac.v3.RBACがある。


ルート

▼ ルートとは

リスナーのサブセットである。

ルートでは、リスナーで処理した通信を受け取り、特定のクラスターのIPアドレスとポートにルーティングする。

▼ ルートの静的な登録

static_resources.listenersキー配下で、リスナーと合わせて設定する。

▼ ルートの動的な登録

Envoyは、起動時にコントロールプレーンのRDS-APIにリモートプロシージャーコールを一方向/双方向で実行し、宛先のルートを取得する。

また、Envoyは宛先のルートを自身に動的に設定する。

...

// リモートプロシージャーコール
service RouteDiscoveryService {
  option (envoy.annotations.resource).type = "envoy.config.route.v3.RouteConfiguration";

  // 双方向ストリーミングRPC
  rpc StreamRoutes(stream discovery.v3.DiscoveryRequest)
      returns (stream discovery.v3.DiscoveryResponse) {
  }

  rpc DeltaRoutes(stream discovery.v3.DeltaDiscoveryRequest)
      returns (stream discovery.v3.DeltaDiscoveryResponse) {
  }

  // 単項RPC
  rpc FetchRoutes(discovery.v3.DiscoveryRequest) returns (discovery.v3.DiscoveryResponse) {
    option (google.api.http).post = "/v3/discovery:routes";
    option (google.api.http).body = "*";
  }
}

...

*実装例*

Istioを使用して、envoyコンテナを稼働させるとする。

Kubernetesでは、YAMLファイルのキー名の設計規約がローワーキャメルケースであることに注意する。

- name: "50001"
  virtualHosts:
    - name: foo-service.foo-namespace.svc.cluster.local:50001
      # ホストベースルーティング
      domains:
        - foo-service.foo-namespace.svc.cluster.local
        - foo-service.foo-namespace.svc.cluster.local:50001
        - foo-service
        - foo-service:50001
        - foo-service.foo-namespace.svc
        - foo-service.foo-namespace.svc:50001
        - foo-service.foo-namespace
        - foo-service.foo-namespace:50001
        - 172.16.0.1
        - 172.16.0.1:50001
      # ルートのリスト
      routes:
        - match:
            # パスベースルーティング
            prefix: /
          route:
            # クラスター (ここではKubernetesのService)
            cluster: outbound|50001|v1|foo-service.foo-namespace.svc.cluster.local
    - name: allow_any
      domains:
        - "*"
      routes:
        - match:
            prefix: /
          route:
            cluster: PassthroughCluster
# Node外からbar-podにリクエストを送信する時に選ばれる。
- name: "50002"
  virtualHosts:
    - name: bar-service.bar-namespace.svc.cluster.local:50002
      # ホストベースルーティング
      domains:
        - bar-service.bar-namespace.svc.cluster.local
        - bar-service.bar-namespace.svc.cluster.local:50002
        - bar-service
        - bar-service:50002
        - bar-service.bar-namespace.svc
        - bar-service.bar-namespace.svc:50002
        - bar-service.bar-namespace
        - bar-service.bar-namespace:50002
        - 172.16.0.2
        - 172.16.0.2:50002
      routes:
        - match:
            prefix: /
          route:
            cluster: outbound|50002|v1|bar-service.bar-namespace.svc.cluster.local
    - name: allow_any
      domains:
        - "*"
      routes:
        - match:
            prefix: /
          route:
            cluster: PassthroughCluster
# Node外からbaz-podにリクエストを送信する時に選ばれる。
- name: "50003"
  virtualHosts:
    - name: baz-service.baz-namespace.svc.cluster.local:50003
      # ホストベースルーティング
      domains:
        - baz-service.baz-namespace.svc.cluster.local
        - baz-service.baz-namespace.svc.cluster.local:50003
        - baz-service
        - baz-service:50003
        - baz-service.baz-namespace.svc
        - baz-service.baz-namespace.svc:50003
        - baz-service.baz-namespace
        - baz-service.baz-namespace:50003
        - 172.16.0.3
        - 172.16.0.3:50003
      routes:
        - match:
            prefix: /
          route:
            cluster: outbound|50003|v1|baz-service.baz-namespace.svc.cluster.local
    - name: allow_any
      domains:
        - "*"
      routes:
        - match:
            prefix: /
          route:
            cluster: PassthroughCluster


クラスター

▼ クラスターとは

クラスターでは、ルートからルーティングされた通信を受け取り、いずれかのエンドポイントのIPアドレスとポートにロードバランシングする。

▼ クラスターの静的な登録

envoy.yamlファイルにて、clustersキーを設定することにより、Envoyに静的にクラスターを静的に設定できる。

static_resources:
  # クラスターのリスト
  clusters:
    # クラスター
    - name: foo-cluster
      connect_timeout: 0.25s
      type: STATIC
      # 負荷分散方式
      lb_policy: ROUND_ROBIN
      load_assignment:
        cluster_name: foo-cluster
        # エンドポイントのリスト
        endpoints:
          - lb_endpoints:
              - endpoint:
                  address:
                    socket_address:
                      # 宛先のIPアドレス
                      address: 10.0.0.1
                      # 宛先が待ち受けるポート番号
                      port_value: 80
              - endpoint:
                  address:
                    socket_address:
                      address: 10.0.0.2
                      port_value: 80
    - name: bar-cluster
      connect_timeout: 0.25s
      type: STATIC
      # 負荷分散方式
      lb_policy: ROUND_ROBIN
      load_assignment:
        cluster_name: bar-cluster
        # いずれかのエンドポイントにロードバランシング
        endpoints:
          - lb_endpoints:
              - endpoint:
                  address:
                    # 冗長化された宛先の情報
                    socket_address:
                      address: 11.0.0.1
                      port_value: 80
              - endpoint:
                  # 冗長化された宛先の情報
                  socket_address:
                    address: 11.0.0.2
                    port_value: 80
    - name: baz-cluster
      connect_timeout: 0.25s
      type: STATIC
      # 負荷分散方式
      lb_policy: ROUND_ROBIN
      load_assignment:
        cluster_name: baz-cluster
        # いずれかのエンドポイントにロードバランシング
        endpoints:
          - lb_endpoints:
              - endpoint:
                  address:
                    # 冗長化された宛先の情報
                    socketAddress:
                      address: 12.0.0.1
                      port_value: 80
              - endpoint:
                  address:
                    # 冗長化された宛先の情報
                    socketAddress:
                      address: 12.0.0.2
                      port_value: 80

▼ クラスターの動的な登録

Envoyは、起動時にコントロールプレーンのCDS-APIにリモートプロシージャーコールを一方向/双方向で実行し、宛先のクラスターを取得する。

また、Envoyは宛先のクラスター設定を自身に動的に設定する。

...

// リモートプロシージャーコール
service ClusterDiscoveryService {
  option (envoy.annotations.resource).type = "envoy.config.cluster.v3.Cluster";

  // 双方向ストリーミングRPC
  rpc StreamClusters(stream discovery.v3.DiscoveryRequest)
      returns (stream discovery.v3.DiscoveryResponse) {
  }

  rpc DeltaClusters(stream discovery.v3.DeltaDiscoveryRequest)
      returns (stream discovery.v3.DeltaDiscoveryResponse) {
  }

  // 単項RPC
  rpc FetchClusters(discovery.v3.DiscoveryRequest) returns (discovery.v3.DiscoveryResponse) {
    option (google.api.http).post = "/v3/discovery:clusters";
    option (google.api.http).body = "*";
  }
}

...

*実装例*

Istioを使用して、envoyコンテナを稼働させるとする。

Kubernetesでは、YAMLファイルのキー名の設計規約がローワーキャメルケースであることに注意する。

# foo-pod内のenvoyコンテナが、以下のenvoy.yamlファイルで構成されているとする。
# クラスター (ここではKubernetesのService)
- name: outbound|50001|v1|foo-service.foo-namespace.svc.cluster.local
  connectTimeout: 0.25s
  type: STATIC
  lbPolicy: ROUND_ROBIN
  loadAssignment:
    clusterName: outbound|50001|v1|foo-service.foo-namespace.svc.cluster.local
    # エンドポイントのリスト
    endpoints:
      - lbEndpoints:
          - endpoint:
              address:
                socketAddress:
                  # 宛先 (ここではPod) のIPアドレス
                  address: 10.0.0.1
                  # 宛先が待ち受けるポート番号
                  portValue: 80
          - endpoint:
              address:
                socketAddress:
                  address: 10.0.0.2
                  portValue: 80
- name: outbound|50002|v1|bar-service.bar-namespace.svc.cluster.local
  connectTimeout: 0.25s
  type: STATIC
  lbPolicy: ROUND_ROBIN
  loadAssignment:
    clusterName: outbound|50002|v1|bar-service.bar-namespace.svc.cluster.local
    endpoints:
      - lbEndpoints:
          - endpoint:
              address:
                socketAddress:
                  address: 11.0.0.1
                  portValue: 80
          - endpoint:
              address:
                socketAddress:
                  address: 11.0.0.2
                  portValue: 80
- name: outbound|50003|v1|baz-service.baz-namespace.svc.cluster.local
  connectTimeout: 0.25s
  type: STATIC
  lbPolicy: ROUND_ROBIN
  loadAssignment:
    clusterName: outbound|50003|v1|baz-service.baz-namespace.svc.cluster.local
    endpoints:
      - lbEndpoints:
          - endpoint:
              address:
                socketAddress:
                  address: 12.0.0.1
                  portValue: 80
          - endpoint:
              address:
                socketAddress:
                  address: 12.0.0.2
                  portValue: 80


エンドポイント

▼ エンドポイントとは

クラスターのサブセットである。

エンドポイントでは、クラスターでロードバランシングされた通信を受け取り、IPアドレスとポート番号を指定して、宛先に送信する。

▼ エンドポイントの静的な登録

static_resources.clustersキー配下で、リスナーと合わせて設定する。

▼ エンドポイントの動的な登録

Envoyは、起動時にコントロールプレーンのEDS-APIにリモートプロシージャーコールを一方向/双方向で実行し、宛先のエンドポイントを取得する。

また、Envoyはルートに宛先のエンドポイント設定を自身に動的に設定する。

...

// リモートプロシージャーコール
service EndpointDiscoveryService {
  option (envoy.annotations.resource).type = "envoy.config.endpoint.v3.ClusterLoadAssignment";

  // 双方向ストリーミングRPC
  rpc StreamEndpoints(stream discovery.v3.DiscoveryRequest)
      returns (stream discovery.v3.DiscoveryResponse) {
  }

  rpc DeltaEndpoints(stream discovery.v3.DeltaDiscoveryRequest)
      returns (stream discovery.v3.DeltaDiscoveryResponse) {
  }

  // 単項RPC
  rpc FetchEndpoints(discovery.v3.DiscoveryRequest) returns (discovery.v3.DiscoveryResponse) {
    option (google.api.http).post = "/v3/discovery:endpoints";
    option (google.api.http).body = "*";
  }
}

...


01-04. スレッド

マルチスレッドモデル

Envoyはマルチスレッドでパケットを処理する。

メモリ上の特定のプロセスで、メインスレッドとワーカースレッドを実行する。

これらのスレッドは、そのプロセスに割り当てられているアドレスを共有する。


メインスレッド (プライマリスレッド)

▼ メインスレッドとは

以下の処理を担う。

  • サーバー/コンテナの起動/停止
  • XDS-APIに関する処理
  • ランタイム
  • メモリバッファ上の統計情報のフラッシュ
  • Envoyのプロセスの様々な処理 (ホットリロードなど)


ワーカースレッド

▼ ワーカースレッドとは

プロキシ処理をに担う。

各ワーカースレッドが独立してリクエストを待ち受ける。

通信をリスナー/フィルター/ルート/クラスター/エンドポイントで処理し、宛先にロードバランシングする。

--concurrencyオプションで並列実行数を設定できる。

envoy_thread


02. ユースケース

リバースプロキシのミドルウェアとして

▼ 外からインバウンド通信から待ち受ける (Ingressリスナー / インバウンドリスナー)

Envoyは、リバースプロキシとして、外部 (例:ロードバランサー、他のEnvoy) からインバウンド通信を待ち受ける。

この時、Envoyはhttp://localhost:<ポート番号>で待ち受け、一方で外部が指定するURLもhttp://localhost:<ポート番号>である。

サービスメッシュ外や他のPodからリクエストを受信するために使用する。

envoy_ingress-listener

▼ ローカルホストにあるマイクロサービスから待ち受ける (Egressリスナー / アウトバウンドリスナー)

Envoyは、リバースプロキシとして、ローカルホストにあるマイクロサービスからアウトバウンド通信を待ち受ける。

この時、Envoyはhttp://0.0.0.0:<ポート番号>で待ち受け、一方でローカルホストにあるマイクロサービスが指定するURLはhttp://<マイクロサービスのホスト>:<ポート番号>である。

サービスメッシュ外や他のPodにリクエストを送信するために使用する。

envoy_egress-listener

▼ ローカルホスト外にあるマイクロサービスにプロキシする

Envoyは、リバースプロキシとして、ローカルホスト外にあるマイクロサービスに通信をプロキシする

Envoy
⬇⬆︎
⬇⬆︎ # HTTP/TCPプロトコル
⬇⬆︎
マイクロサービス

なお、Envoyは一部のプロトコル (例:FastCGIプロトコル) をサポートしていない。

その場合、そのプロトコルに対応可能なリバースプロキシ (例:Nginx、Apache) を置く必要があり、二重のリバースプロキシになる。

Envoy
⬇⬆︎
⬇⬆︎ # TCPプロトコル
⬇⬆︎
Nginx
⬇⬆︎
⬇⬆︎ # FastCGIプロトコル
⬇⬆︎
マイクロサービス


L4/L7ロードバランサーのミドルウェアとして

Envoyの文脈では、ロードバランサーとしての使い方を『フロントプロキシ』『エッジプロキシ』とも呼んでいる。

Istio IngressGatewayでEnvoyを使用するユースケースは、これに属する。

envoy_loadbalancer