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プラクティス集@Helm

はじめに

本サイトにつきまして、以下をご認識のほど宜しくお願いいたします。


01. リポジトリ構成規約

リポジトリ分割のメリット

リポジトリを分割することにより、以下のメリットがある。

  • 認可スコープをリポジトリ内に閉じられるため、運用チームを別に分けられる。


アプリとIaCを同じリポジトリで管理

repository/
├── app/
├── manifests/
│   └── helm/
│       ├── foo-chart/


アプリとIaCを異なるリポジトリで管理 (推奨)

▼ 各チャートを同じリポジトリで管理する (推奨)

各チャートを同じリポジトリで管理する。

各チャートの全てのバージョンをリポジトリ内で管理すると、index.yamlファイルやチャートアーカイブ (.tgz形式ファイル) が必要になってしまう。

そのため、1個のバージョンのみを管理する。

# KubernetesとHelmを同じリポジトリにする場合
repository/
├── kubernetes/
├── helm/
│   ├── foo-chart/
│   ├── bar-chart/
# KubernetesとHelmを異なるリポジトリにする場合
repository/
├── foo-chart/
├── bar-chart/

▼ 各チャートを異なるリポジトリで管理する

各チャートを異なるリポジトリで管理する。

この方法であると、リポジトリが増えすぎてしまうため、少なくとも同じ種類のチャートは同じリポジトリで管理する方が良い。

# KubernetesとHelmを同じリポジトリにする場合
repository/
├── kubernetes/
├── helm/
│   └── foo-chart/
# KubernetesとHelmを異なるリポジトリにする場合
repository/
├── foo-chart/


02. ディレクトリ構成規約

通常

最も基本的な構成。

実行環境別にvaluesファイルを作成する。

また、実行環境の差は設定値だけとし、templatesディレクトリ配下にマニフェストを配置する。

repository/
├── foo-chart/
│   ├── templates/
│   │   ├── config-map.yaml
│   │   ├── deployment.yaml
│   │   ├── service.yaml
│   │   ...
│   │
│   ├── values/
│   │   ├── tes.yaml # テスト環境へのapply時に出力する値
│   │   ├── stg.yaml # ステージング環境へのapply時に出力する値
│   │   └── prd.yaml # 本番環境へのapply時に出力する値
...


実行環境別

実行環境別にvaluesファイルを作成する。

また、実行環境ごとにマニフェストの構造に差分があるとし、templatesディレクトリ配下に実行環境別のディレクトリを配置する。

repository/
├── foo-chart/
│   ├── templates/
│   │   ├── shared/ # 共通のマニフェストの部品
│   │   ├── prd/ # 本番環境のみで適用するマニフェストの部品
│   │   ├── stg/
│   │   └── tes/
│   │
│   ├── values/
│   │   ├── tes.yaml # テスト環境へのapply時に出力する値
│   │   ├── stg.yaml # ステージング環境へのapply時に出力する値
│   │   └── prd.yaml # 本番環境へのapply時に出力する値
...


リソース別

リソース別にチャートを作成する。

また、valuesファイルを配置するディレクトリをルートに配置する。

repository/
├── kubernetes/
│   ├── templates/
│   ...

├── istio/
│   ├── templates/
│   ...

├── argocd/
│   ├── templates/
│   ...

└── values/
    ├── tes # テスト環境へのインストール時に出力するvaluesファイル
    │   ├── kubernetes/
    │   ├── istio/
    │   └── istio/
    
    ├── stg/ # ステージング環境へのインストール時に出力するvaluesファイル
    └── prd/ # 本番環境へのインストール時に出力するvaluesファイル
...

ルートに配置したvaluesディレクトリにはvaluesファイルを置く。

valuesファイルは、リソース別に管理する。

# 共通のvaluesファイル
#============
# Global
#============
labels:
  env: prd

#============
# Deployment
#============
deployment: ...

#============
# Service
#============
service: ...


03. コード規約

テンプレート

▼ 命名規則

ファイル名はスネークケースとする。

可能な限り、Kubernetesリソースの種類名 (例:Deployment、Service、ConfigMap) とする。

ただし、同じKubernetesリソースのマニフェストを複数作成する場合は、識別できる名前をプレフィクスとしてつける。

▼ ロジック

可能な限り、Kubernetesリソースごとのテンプレートを使い回すようにする。

*実装例*

このConfigMapのマニフェストが1個あれば、valuesファイルによらずにConfigMapを作成できる。

apiVersion: v1
kind: ConfigMap
metadata:
  name: foo-config-map
data:
  {{- range $key, $value := .Values.config | fromYaml }}
  {{ $key }}: {{ $value }}
  {{- end }}

▼ 拡張子

拡張子はyamlとする。

▼ アクションの選定

yamlファイルを丸ごと出力するようなアクション (例:include関数など) はできるだけ避け、マニフェストの共有部分を増やす。

差分があるところに関しては、Values関数を使用し、valuesファイルからパラメーターを渡すだけになるように設計する。

公式リポジトリの実装方法を見て学んだ方が早い。


04. 開発環境

helmコマンドのセットアップ

▼ バージョンの固定

バージョンを統一するために、.tool-versionsファイルを作成する。

$ asdf local helm <バージョン>
# .tool-versionsファイル
helm <バージョンタグ>

asdfパッケージを使用して、helmコマンドをインストールする。

.tool-versionsファイルに定義されたバージョンがインストールされる。

$ asdf plugin list all | grep helm

helm   *https://github.com/Antiarchitect/asdf-helm.git
...


$ asdf plugin add https://github.com/Antiarchitect/asdf-helm.git
$ asdf install


05. チャートのアップグレード

チャートのアップグレードとは

新バージョンのチャートを使用して、改めてHelmリリースを実行することにより、チャートをアップグレードする。


チャートのアップグレード方法

▼ 非CRDのみからなるチャート場合

非CRDのみからなるチャートのアップグレードは以下の手順で行う。

アップグレードが正常に完了したことがわかるように、--waitオプションを有効化すると良い。

(1)

helm upgradeコマンドを実行することにより、インストール済みのチャートをアップグレードする。

$ helm upgrade <Helmリリース名> <チャートへのパス> -f foo-values.yaml --version <バージョンタグ> --wait
(2)

Helmリリースのリビジョン番号が新しくなっていることを確認する。

$ helm list

▼ CRDを含むチャートの場合

Helmは、CRDを含むチャートのインストールはサポートしているが、アップグレードとアンインストールをサポートしていない。

そのため、アップグレードとアンインストールはkubectlコマンドで実行する必要がある。

補足として、他のツール (例:ArgoCD、Flux) を介してHelmを実行する場合、helm upgradeコマンドではなく、helm templateコマンドとkubectl applyコマンドを使用しているため、この問題は考慮しなくともよくなる。

(1)

kube-apiserverにCRDのマニフェストを送信し、新バージョンのCRDを更新する。

Helmは、CRDの更新をサポートしていない (作成はサポートしている) .

そのため、kubectlコマンドを使用してこれを更新する。

$ kubectl apply -f <新バージョンのCRDのマニフェストのURL>
(2)

kube-apiserverにカスタムリソースのマニフェストを送信する。

$ helm install <Helmリリース名> <チャートリポジトリ名>/foo-crd -n foo --version <バージョンタグ>
(3)

補足として、もしCRDをインストールする前にカスタムリソースをインストールしようとすると、カスタムリソースを定義できずにエラーになってしまう。

Error: unable to build kubernetes objects from release manifest: [unable to recognize "": no matches for kind "<カスタムリソース名>>" in version "<カスタムリソースのAPIグループ>"
(4)

旧バージョンのCRDを削除する。

Helmは、CRDの削除をサポートしていないため、kubectl deleteコマンドを使用する。

$ kubectl delete -f <旧バージョンのCRDのマニフェストのURL>


新バージョンの自動検出

外部のツール (例:renovate) を使用して、チャートの新バージョンを自動的に検出する。


非推奨なAPIのアップグレード

チャートの含まれる廃止予定のAPIをアップグレードせずに、Kubernetesをアップグレードしてしまったとする。

Helmは、helm upgradeコマンド時に、デプロイ済みリリースとデプロイ予定リリースの間で差分パッチを作成しようとする。

この時、APIがすでに存在しないマニフェストが含まれると、差分パッチを作れずにエラーになる。

これが起こってしまった場合、Helmのデプロイ済みのリリースを直接書き換える必要がある。

Helmは、デプロイ済みのリリースをCluster内でSecretのデータとして管理している。

そのため、これを書き換えることになる。


06. CIパイプライン

仕様書自動作成

helm-docsを使用して、Chart.yaml ファイルとvaluesファイルに基づくチャートの仕様書を作成する。

作成した仕様書を自動コミットできるようにする。

$ helm-docs -f <valuesファイル名>
apiVersion: v2
name: best-values-example
description: One of the best values parsing example charts here, exhibits several more complicated examples
version: "0.2.0"
home: "https://github.com/norwoodj/helm-docs/tree/master/example-charts/best-values-example"
sources:
  [
    "https://github.com/norwoodj/helm-docs/tree/master/example-charts/best-values-example",
  ]
engine: gotpl
type: application
maintainers:
  - email: norwood.john.m@gmail.com
    name: John Norwood
# best-values-example

![Version: 0.2.0](https://img.shields.io/badge/Version-0.2.0-informational?style=flat-square) ![Type: application](https://img.shields.io/badge/Type-application-informational?style=flat-square)

One of the best values parsing example charts here, exhibits several more complicated examples

**Homepage:** <https://github.com/norwoodj/helm-docs/tree/master/example-charts/best-values-example>

## Maintainers

| Name         | Email                      | Url |
| ------------ | -------------------------- | --- |
| John Norwood | <norwood.john.m@gmail.com> |     |

## Source Code

- <https://github.com/norwoodj/helm-docs/tree/master/example-charts/best-values-example>

## Values

| Key                          | Type   | Default                                                 | Description                                                                                                        |
| ---------------------------- | ------ | ------------------------------------------------------- | ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ |
| config.databasesToCreate[0]  | string | `"postgresql"`                                          | default database for storage of database metadata                                                                  |
| config.databasesToCreate[1]  | string | `"hashbash"`                                            | database for the [hashbash](https://github.com/norwoodj/hashbash) project                                          |
| config.usersToCreate[0]      | object | `{"admin":true,"name":"root"}`                          | admin user                                                                                                         |
| config.usersToCreate[1]      | object | `{"name":"hashbash","readwriteDatabases":["hashbash"]}` | user with access to the database with the same name                                                                |
| statefulset.extraVolumes     | list   | `[{"emptyDir":{},"name":"data"}]`                       | Additional volumes to be mounted into the database container                                                       |
| statefulset.image.repository | string | `"jnorwood/postgresq"`                                  | Image to use for deploying, must support an entrypoint which creates users/databases from appropriate config files |
| statefulset.image.tag        | string | `"11"`                                                  |                                                                                                                    |
| statefulset.livenessProbe    | object | `{"enabled":false}`                                     | Configure the healthcheck for the database                                                                         |
| statefulset.podLabels        | object | `{}`                                                    | The labels to be applied to instances of the database                                                              |

---

Autogenerated from chart metadata using [helm-docs v1.12.0](https://github.com/norwoodj/helm-docs/releases/v1.12.0)


チャートのホワイトボックステスト

▼ ホワイトボックステストの実行環境

Helmで作成したマニフェストをツールの標準入力に渡し、Helmを検証する。

静的解析の実行環境は、実際のマニフェストデプロイ時の実行環境 (ArgoCDであればrepo-serverのコンテナ) と同じにする。

▼ 静的解析

観点 説明 補足
チャートの構造テスト Helmの静的解析コマンド (helm lintコマンド) を使用する。チャートの構造 (valuesファイルがあるか、Chart.yamlがあるかなど) を検証する。
チャートのベストプラクティス違反テスト 外部のベストプラクティス違反テストツール (例:記入中...) を使用する。マニフェストではなく、チャートのベストプラクティス違反を検証する。
チャートの脆弱性診断 外部の脆弱性診断ツール (例:記入中...) を使用する。マニフェストではなく、チャートの実装方法に起因する脆弱性を検証する。補足として、チャートのインストールによるKubernetesリソースのセキュリティスキャン (例:trivy) は、既に作成されたKubernetesリソースに対する検証のため、ここには含めない。 https://blog.aquasec.com/trivy-v0.29.0-rbac-security

静的解析のコマンドセットを使用してよい。

▼ ドライラン

テスト環境に対してhelm diffコマンドを実行することにより、ドライランを実施する。

helm diffコマンドの結果は可読性が高いわけではないため、差分が多くなるほど確認が大変になる。

Helmリリースの粒度を小さくし、差分が少なくなるようにする。

▼ ユニットテスト

Helmのユニットテストコマンド (helm testコマンド) を使用して、機能追加/変更を含むチャートが単体で正しく動作するか否かを検証する。

代わりに、外部のテストツール (例:Terratest) を使用しても良い。

helm testコマンドを使用する場合、チャートの/templates/testディレクトリ以下にテストコードを配置する必要がある。

そのため、helm upgradeコマンドでインストールされるHelmリリースにテストコードも含まれてしまうことに注意する。

▼ 回帰テスト

事前に、既存のチャートでゴールデンファイルを作成しておき、回帰テストを実施する。


ホワイトボックステスト結果の通知

▼ Helmを採用する場合

Helmには通知能力がなく、手動で知らせる必要がある。

そこで、helm diffコマンドをGitOpsによるCDパイプライン上で実行していない (手動で実行している) 場合、helm diffコマンドの結果をクリップボードに出力し、これをプルリクに貼り付ける。

$ helm diff <チャート名> -f foo-values.yaml --no-color \
    | grep -A 1000 Comparing \
    | pbcopy

あるいは、Namespaceを指定すると、追加/変更/削除の箇所のみ取得できる。

$ helm diff <チャート名> -f foo-values.yaml --no-color \
    | grep foo-namespace \
    | pbcopy

foo-namespace, foo-deployment, Deployment (apps) has been added:
...

▼ Helm以外を使用する場合

GitOpsツールの差分を使用して、差分画面のURLを共有する。またはCDツールの通知能力 (例:argocd-bot) を使用して、CDパイプラインの結果が通知されるようにする。


チャートのブラックボックステスト

▼ ブラックボックステストの実行環境

Helmで作成したマニフェストをClusterにデプロイし、動作を検証する。

実際のCluster上でマニフェストを検証してもよいし、本番のCluster (例:AWS EKS、Google Cloud GKE、Azure AKE、Kubeadmなど) に相当する実行環境 (例:Kind、K3SやK3D、Minikubeなど) をCI上に作成してもよい。

GitHub Actionsであれば、CI上にCluster構築するActionが提供されている。

▼ 結合テスト

テスト環境に対してhelm upgradeコマンドを実行することにより、追加/変更を含む複数のチャートが正しく連携するか否かを検証する。

これは、CDパイプライン上で実施しても良いが、デメリットとしてhelm upgradeコマンドで出力される警告ログを確認できなくなってしまう。

▼ システムテスト

テスト環境に対してhelm upgradeコマンドを実行することにより、既存機能/追加/変更を含む全てのチャートを組み合わせたシステムテストを実施する。

これは、GitOpsによるCDパイプライン上で実施しても良いが、デメリットとしてGitOpsツール上ではhelm upgradeコマンドで出力される警告ログを確認できなくなってしまう。

06-02. CDパイプライン

デプロイ

Kubernetesのプラクティスになるため、ここでは省略する。


ロールバック

▼ Helmを採用する場合

helm historyコマンドで過去のHelmリリースタグ (リビジョン) を確認し、helm rollbackコマンドでロールバックする。

▼ Helm以外を使用する場合

Kubernetesのプラクティスになるため、ここでは省略する。


06-03. 事後処理

デプロイの通知

Kubernetesのプラクティスになるため、ここでは省略する。